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自衛隊の「謎水装置」回避は消費者保護へと繋がるか

黒猫ドラネコ

偏愛・脳汁を語るサイト「ヲトナ基地」では、多数の「愛しすぎておかしくなるほどの記事」をご紹介してまいります。 ヲトナ基地で今回紹介する記事は「自衛隊『謎水装置』回避は消費者保護へと繋がるか」。黒猫ドラネコさんが書かれたこの記事では、疑似科学への偏愛と、それを注視することについて語っていただきました!

またもや「疑似科学」の疑いに対して世間の厳しい目が向けられることになりました。

今年1月、陸上自衛隊練馬駐屯地に「NMRパイプテクター」なる磁気活水器が導入されるという入札公告の情報が科学者ら有志によって発見され、ネット上で大きな話題に。国会議員まで動く事態に発展し、すぐに入札が回避されました。

論争が起こる「謎水」

この活水器は日本システム企画株式会社が1995年から販売しています。核磁気共鳴(NMR)により水を活性化することで水道管のサビを取り、外部電源もメンテナンスも不要で「建物の中にある給水管や空調管など水配管の寿命を建物寿命まで延命」でき、その累計実績は4300棟以上(2022年3月現在)。ただし、これらは販売元のホームページなどからの引用です。

価格は1台約30万円~数千万円。公的機関や分譲マンションなどを販売先とし、既に病院や大使館などでは導入が確認されているそうで、なんと同社ではバッキンガム宮殿への導入も実績として挙げていました。

こちらが数年前から、ネット上では「疑似科学ではないか」と厳しく指摘されています。ネット上では「謎水装置」と呼ばれるようになりました。

「謎水装置@自衛隊」togetter

https://togetter.com/li/2299936

前回のテーマだった「EM菌」と同様、有識者らと販売元などとの間で、たびたび論争が繰り広げられているのです。

販売元はホームページ上で「効果の測定には様々な方法に対応し、いずれも数値で観測できるため一目瞭然の効果です」などとしていますが、その実験での再現性などには疑義があるようです。狭い範囲で称賛されていたものが、疑念を抱いた名もなき有志によって分析され、それにまた反論が湧き上がり……。

たとえば活水器の現物を入手したとして分解しちゃう模様をYouTube動画にする者が現れたかと思えば、すぐに販売元が「偽造品ではないか」と表明していました。どちらの言い分に理があるかは置いといて、前回も言いましたが、こういう案件は私の大好物です。(きっと好きな人も多いはず)

(前回記事)

https://www.maruhan.co.jp/east/media/new/189

ゆっくり解説「NMRパイプテクターを分解してみた」

NMRパイプテクターについてのお知らせ「当社製品の偽造品にご注意下さい」(日本システム企画サイト)

https://www.jspkk.co.jp/jp/product-caution/

謎水まんが

かくいう私も、数年前からこの活水器や販売元の動向をウォッチする方の発信から、この問題を知ることができました。その名も「謎水さん」。自宅マンションに活水器が設置されたことがきっかけで「ニセ科学」をめぐる問題に取り組むようになった彼は、自治体への取材なども精力的におこなっています。

マンションに導入しようとする管理組合とのやりとり、販売元とのいざこざ、消費者センターへの問い合わせなどを「謎の水装置まんが」としてネット上に発表し、注目を集めました。この漫画は当事者の目線から、しかも誰の身にも起こり得る危機に関しての分かりやすさが重視されています。ニセ科学の手法や構造なども取り上げられていました。

検索して謎水まんがに辿り着けば、「こんな指摘をされている装置だったのか」と、多くの人が立ち止って考えるきっかけにはできるでしょう。

(謎水の水装置まんが)URL

https://nazomizu.com/html/comic/main/

それでなくても消費者問題を顕在化させるのは意義のあること。実際に製品に接した人からの賛否両論があって、それらを判断材料にして選択することによりわれわれは健全な消費生活が送れるわけですからね。どんなシロモノでも、販売元の一方的な言い分だけを信じちゃダメなんですよ。

批判者への牽制

しかし当然ながら、売りたい側もあの手この手で「ネットの噂」を打ち消しながらPRするわけで。そもそも疑わしい点があろうと、なんやかんや言いくるめられるから公的機関が導入を検討するまでに広がるのです。密室で契約を取りつけたなら、疑念を抱いたり指摘したりする人が契約者の周囲にいても気付かないと思います。それこそ入札公告でも見つけない限りは。

それに加え、日本システム企画は自社サイト内などで批判した科学者らを名指しで牽制しています。悪評を削除するようにと、訴訟をほのめかす手紙を送るなどしているようです。これが製品への疑義を委縮させる目的だとしたらいかがなものでしょうか。

消費者基本法では「批判的意識を持つ責任」「主張し行動する責任」などが掲げられています。それらを打ち消そうとするなら、余計なお世話かもしれませんが、ますます不信感が募るだけだと思いますよ。

この件に限った話ではなく、こうした動きは「疑似科学の疑い」にはつきもの。完膚なきまでに納得させる科学的根拠を出せば済むはずなのに不思議ですね。それが出せないなら、指摘する声や疑いの目のほうが強いのは当然でしょう。

問題視が認知されるか

さて、今回の自衛隊の導入キャンセル騒動は、この活水器が「なんだか問題視されているもの」として、ネットだけでなく実社会に広く認知される分水嶺となるのでしょうか。

販売元の広告が都営地下鉄の車内などに出され続けていることについて、東京都議らが情報収集を始めています。感触を聞いたところ、例えば都の施設で導入しようとした場合であれば「陸自と同じように入札契約制度としてNGになる可能性は高い」。ただ、東京都交通局や生活文化スポーツ局消費生活部などに問い合わせても、明確な広告のガイドライン違反ではなく対処しきれていない状況とのこと。どうやら広告に異議を唱えるような問い合わせがあるたび「内容の微修正」が繰り返されるということで、「制度の隙間を掻い潜っている」そうです。

消費者庁の見解では、優良誤認が生じる恐れなどの景品表示法の適用は一般消費者の個人向けに限られ、マンション管理組合や企業が相手では対象外。それもあって、たとえば「外部電源なしメンテナンス不要で半永久的に」などとする強めの文言があっても、自治体は広告をどうにもできないのです。

自衛隊が導入を取りやめる程の事態になりながら、販売元の宣伝は今日も堂々と万人の前に出されています。消費者保護とは何なのかを考えさせられますね……。

ただ、この問題については既に国会議員が動いていて、防衛省、消費者庁などのヒアリングも行われたようです。自治体や国もこれから注意していくことになるでしょう。引き続き、有志の厳しい目で製品の評判を俎上に載せ続けることで、本格的に条例や法の整備へと巨石を動かすことに期待したいですね。

こうした流れに抗いたいのであれば、繰り返しになりますが販売元は「恫喝」みたいなことをせず、しっかり科学的事実を提示して堂々としてほしいと思います。科学が風評に負けるようではいけません。科学じゃないなら、知らんけど。 

少なくとも私は、自宅マンションの集会の案内があるたび「うちは謎水装置じゃないよな」と修繕の資料などをしっかり確認するようになりました。皆さんのお家や、学校や職場はどうでしょうか。

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