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ビールって、こんなにおいしい! キリンが生み出したクラフトビール「豊潤 496」の誕生秘話

トイアンナ
偏愛・脳汁を語るサイト「ヲトナ基地」では、多数の「愛しすぎておかしくなるほどの記事」をご紹介してまいります。 ヲトナ基地で今回紹介する記事は「ビールって、こんなにおいしい! キリンが生み出したクラフトビール「豊潤 496」の誕生秘話」。トイアンナさんが書かれたこの記事では、キリンビールのグランドアンバサダー、中水和弘さんに「豊潤496」の開発秘話についてインタビュー。クラフトビールへの偏愛を語っていただきました!

こんにちは、ビールヲタクのトイアンナです。
私はイギリスに住んでいた累計6年の間、ビールを飲んで飲んで、それでも物足りなくてベルギー、ドイツへも足を延ばし。なんとハンドポンプを輸入したことすらあります。

そんな過去の経験も相まって、「ビールにまつわる取材」のお仕事をいただくことがあり、2018年にはキリンのクラフトビールを取材したことも。

そして今回、「クラフトビール界の大御所」キリンビールで生まれた「豊潤496」の開発秘話を、キリンビールのブランドアンバサダーを務める中水さんに伺いました。

中水 和弘(なかみず・かずひろ)さん広島県出身。キリンビール株式会社 クラフトビール事業部 企画担当・ブランドアンバサダー。ビールの面白さと、多様なビールと料理の組み合わせを楽しむペアリングを広めるため、一般のお客様向けのセミナーや飲食店向けのセミナー講師も歴任する。

中水さん:さっそくですが、まずは弊社のフラッグシップビール、「SPRING VALLEY BREWERY 豊潤ラガー496」を飲んでみてください。

-泡があるグラスと、ないグラスがありますね。

中水さん:そうなんです。「ビールの泡有り、泡無しで味が変わる」ということを体験していただきたく、直営店にあたる代官山の「スプリングバレーブルワリー東京」では、泡の有り・無しでお出しすることもできます。そこで、あえて飲み比べてみていただくと、味わいの変化を楽しんでいただけます。

-たしかに。泡がない方は、どっしりとしたホップの苦うまさを感じます。一方、泡がある方はふわふわでソフトな口当たり。甘みすら感じます。

中水さん:この複雑さが、「豊潤ラガー 496」のすごさですね。このビールにはキリンラガー比で1.5倍もの麦芽を使っています。ホップも5種類をブレンドし、豊潤なコクを作り出しました。

しかも、ホップを7日間漬け込む「ディップホップ製法」というやり方で、じっくりと丁寧に香りを出しています。こんなにコクがあるから、初めて飲んだときは「これってしっかりした味わいが特徴のエールビールですよね?」と聞いたんです。そうしたら、もっとスッキリした味が特徴のラガービールだと教わって驚きましたね。

「ビールってこんなにおいしいんだ」と思っていただけるのが、クラフトビールの「SPRING VALLEY BREWERY 豊潤ラガー496」じゃないかなと。

「地ビール」ブームの危機と、クラフトビールの登場

-クラフトビールは、比較的最近のトレンドですよね。その前は、日本で地ビールブームがあったと記憶しています。


中水さん:1994年の酒税法一部改正で、製造免許の年間最低製造数量が2,000キロリットルから60キロリットルに緩和され、小さなブルワリー(醸造所)が全国で次々に誕生しました。エチゴビールや小樽ビールなど、地域性豊かな地ビールが注目を集め、一大ムーブメントに。今のクラフトビール隆盛の礎を築いた時期ですね。

中水さん:小ロットでビールが生産できるなら……と、多くの企業が地ビール業界へ参入しました。しかし、そこで思わぬ落とし穴があったんです。何だと思います?

―ブランドごとに、安定した味を維持できなかったことでしょうか。かつて、地ビールを飲んだときに「あれっ、こんなにおいしくなかったっけ?」と思ったことがあります。

中水さん:その通りです。地ビールを生産することはできても、たとえば道の駅で常温陳列されてしまったときに、味が劣化してしまう。大手ビール会社は常温でビールを輸送・陳列できる高い技術力を持っています。しかし、多くの地ビール会社にはそれがなかった。結果として、多くの企業が撤退してしまったのです。

その後、COEDO(コエド)が地ビールブランドから、クラフトビールブランドに方針転換します。小規模で、きちんとおいしいビールが増えたことで、クラフトビールが徐々に広がっていったのです。

そんな中で、実は1980年代からキリンビールも工場併設のミニブルワリーと、レストランを運営していました。地元住民にも楽しんでもらうことで、直接お客様の生の声を蓄積していたんです。この“体験価値”が、後のクラフト事業の大きな糧になりました。そして2021年に生まれたのが、「SPRING VALLEY 豊潤<496>」です。

完全数の496に込めた「完璧なクラフトビール」を作る心意気

中水さん:商品名の「496」についてですが、1から31までの整数をすべて足すと「496」になります。つまり、カレンダーの1日から31日まで「毎日飲んでも飽きないビール」を目指しました。また、496は数学における完全数でもあります。

「クラフトビールには尖った味が多い」けれども、「記憶に残らない」というのが、私たちがクラフトビールを作ろうとしたうえでぶつかった課題のひとつでした。「SPRING VALLEY 豊潤<496>」は記憶に残るビール、つまり何度も飲んでいただけるビールを追求した味です。

10年かけて作られた「至高の味」への道のり

-構想から完成までには、どれくらいの時間がかかったのでしょうか。

中水さん:約10年です。たとえば、プロトタイプをキリンビールの通販サイト<DRINKX>限定で販売し、寄せられたお客様のご意見を参考にしながら、私たちにしか出来ない味の追求をしました。

直営店が切り開いた「クラフトビール」の認知度

-実際のお披露目から、ヒットまでの流れを教えてください。

中水さん:2014年7月に、メディアへ社長直々に「これからクラフトビールを作っていく」と発表しました。そして、2015年4月には代官山に直営店をオープンしました。

直営店を作ったのは、まず「クラフトビール」を知っていただくためです。当時は、「クラフトビールって知っていますか?」と質問しても、半分くらいの方しか知らないような状況でした。

代官山でも最初はいつものビールとクラフトビールの区別がついておらず、「一番搾りないの?」とおっしゃられるお客様もいました。そこからひとりずつクラフトビールが何か、そして飲み方の違いや、味わいの違いを知っていただく。地道な努力が功を奏して、クラフトビールの認知度は9割を超えたのです。

そして2021年3月から、赤い缶の「SPRING VALLEY 豊潤<496>」を全国展開。家でのお酒としても支持され、人気商品となりました。代官山の直営店では定番品以外に、直営店でしか飲めない限定品も提供し、“体験価値”をさらに高めています。2025年3月にはリブランディングし、味わいはそのままに商品名称を「SPRING VALLEY BREWERY 豊潤ラガー496」としました。

クラフトビールは、体験してこそだと思います。家でなら、グラスの温度を変えてみる。グラスの種類を変えてみる。新しいスパイスを入れてビアカクテルを作るのもいいですね。ぜひ「SPRING VALLEY BREWERY 豊潤ラガー496」を手に取り、その物語を味わってみてください。

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