
米津玄師の原点、ハチの音楽を辿る。15年来のファンが選ぶ名曲ランキング
偏愛・脳汁を語るサイト「ヲトナ基地」では、多数の「愛しすぎておかしくなるほどの記事」をご紹介してまいります。 今回紹介する記事は『米津玄師の原点、ハチの音楽を辿る。15年来のファンが選ぶ名曲ランキング』。ぐりこさんが書かれたこの記事では、米津玄師こと「ハチ」の名曲について語っていただきました!
米津玄師さんは、いま日本でいちばん注目度が高いと言っても過言ではないアーティストではないでしょうか。
今回は、そんな米津玄師さんの原点である「ハチ」時代の名曲を、15年来のファンである筆者が紹介していきます。
最近米津玄師さんのファンになった方や、ハチ時代のことを知らない方は、ぜひチェックしてみてください。ハチ時代を知っている方は、当時を懐かしむような気持ちで楽しんでもらえたら嬉しいです。
ボカロP「ハチ」の時代は、米津玄師の原点である
出典:米津玄師 公式Instagram
古参ファンから新たなファンまで、多くの人々を熱狂させた機動戦士ガンダムの最新シリーズ『ジークアクス』の主題歌となった『Plazma』。
アニメ『メダリスト』の主題歌で、フィギュアスケーターの羽生結弦さんとコラボしたMVが話題となった『BOW AND ARROW』。
Netflixドラマ『さよならのつづき』の主題歌である『Azalea』、ジョージアのCMソングである『毎日』、NHK朝ドラ『虎に翼』の主題歌である『さよーならまたいつか!』。
最近の楽曲だけ振り返ってみても、名だたるタイアップで大忙し。「米津玄師さんの名前や楽曲を耳にしたことがない人は、もう日本にはいないんじゃないか」とさえ思えるレベルです。
そんな彼は「米津玄師」名義で活動する前、ボカロP「ハチ」として活動していました。
ボカロPとはVOCALOID(※)を使った楽曲をリリースしている人たちのこと。米津玄師さんも数々のボカロ曲を手掛け、ニコニコ動画に投稿していた名ボカロPだったのです。
私はハチ時代に彼の存在を知り、そこからずっと彼の曲を聴き続け、気づけば15年経っていました。今年で32歳なので、半生近く、彼の曲を聴いていることになります。急に古参感を出し始めるウザいヲタクですみません。
そんな私がいつも思うのは、ハチ時代があったからこそ、いまの米津玄師さんがいるということ。
だからこそ、最近米津玄師さんを好きになった人には、ハチ名義の曲も聴いてみてほしい。きっと、彼のことをもっともっと好きになるはずだから。
※VOCALOID:ボーカロイド。ヤマハが開発したもので、歌声を合成できる技術やソフトウェアの総称を指す。
ヲタクが選んだ、米津ファンにおすすめなハチの名曲ランキング
ここからは、私が米民(米津ファンのこと)のみなさんに聴いてほしい、ハチの名曲をランキング形式で発表します。
完全に私の独断と偏見で選んでいますが、ヲタクの名に懸けて、本気でおすすめできる曲を選びました。
「ボカロの曲は聴いたことがない」「ボカロの電子的な歌声が苦手…」なんて方にも楽しんでもらいやすい曲を厳選しています。ぜひ、米津玄師さんの新たな一面を覗く気持ちで聴いてもらえたらと思います。
【1位】ドーナツホール
https://youtu.be/qnX2CdOBcDI?si=_i1uBEf0YYBgS-6U
『ドーナツホール』は2013年10月に公開されたもので、ボーカロイドGUMIが歌う楽曲となっています。ハチさんらしい、曖昧で物憂いげなのに、どこか一筋の光が見えるような歌詞が魅力です。
米津玄師名義でセルフカバーもしているので、米民のみなさんなら聴いたことがあると思います。ただ、ぜひ原曲も聴いてみてほしい。
2024年の秋には、GODIVAとのコラボに際して、MVを刷新した『ドーナツホール 2024』が発表されました。
https://youtu.be/y7fu_nNQAEQ?si=vs3woPzUwb5TVIrQ
GUMI・初音ミク・巡音ルカ・鏡音リンの4人を主人公にしたMVは、ストーリー性のあるアニメ調の内容になっていて、見ていて楽しい作品です。
私は先日『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』の東京ドーム公演に行ったのですが、ドーナツホールがセットリストの一曲に入っていて、感無量でした。まさか令和のこの時代に、ドーナツホールを米津玄師さんの生声で聴けるなんて……と、ちょっと泣いてしまいました。
【2位】砂の惑星 feat.初音ミク
https://youtu.be/AS4q9yaWJkI?si=sm97-6v--sdCiju5
『砂の惑星 feat.初音ミク』も、米津玄師名義でセルフカバーしている楽曲なので、聴き覚えのある米民が多いかと思います。
2012年に米津玄師としての活動がスタートして以降、ハチ名義での活動は控えられていました。
そんな中、2017年7月に、初音ミク10周年記念イベントのテーマソングとして作られ、ハチ名義で発表された本曲。5年ぶりのハチさんの新曲に、ハチファンたちは大いに湧きました。
良い意味でちょっと「スレた感じ」の歌詞を、初音ミクがゆったりとしたテンポで、気だるげに歌い上げる。
歌詞の中には、ボカロファンが「あ、あの曲のことだ!」と湧いてしまうようなフレーズがちりばめられていて、ファンたちがこぞって考察をしていることでも有名です。
「ボカロには疎い」という方は、まずは「米津玄師さんの歌声で聴くのとは少し違うな~」なんてところから楽しんでみてください。
【3位】マトリョシカ
https://youtu.be/HOz-9FzIDf0?si=4g0Ltz1Qx1bYF_Al
2010年8月にリリースされた『マトリョシカ』は、ハチさんを代表する超ヒット曲のひとつ。リリースからしばらく経っても、本曲を使った「歌ってみた」や「踊ってみた」でニコニコ動画が盛り上がっていました。
軽快なギターサウンドと力強いドラムが心地よいテンポを刻む、賑やかな楽曲です。
ハチさんの他楽曲と比較しても特に意味深な歌詞ですが、キャッチーさも感じるような言葉並びと、繰り返されるフレーズが中毒性の高い一曲です。
もし「曲自体は良いけど、ボカロの高音がちょっと苦手かも…」と感じるようであれば、「歌ってみた」を聴いてみるのもおすすめ。曲自体を好きになれば、ふとした瞬間に「あれ、ボカロの声も良いかも~!」と思えるようになるはずです。
https://youtu.be/P0FrMZJ1618?si=MERAnz4MmTDf5aTv
【4位】パンダヒーロー
https://youtu.be/0RU_05zpETo?si=wXX6pOvteSLdubLf
『パンダヒーロー』は2011年1月にリリースされた楽曲で、歌い手はGUMI。マトリョシカにかなり近い雰囲気で、力強く軽快なドラムのリズムと、巧妙な言葉遊びが聴いていて心地よいです。
アップテンポではあるものの、マトリョシカに比べるとリズムはゆったり目。ボカロ特有の高音感も抑えられているので、ボカロ初心者でも聴きやすいと思います。
曲名のとおり「ヒーロー」を主人公にした歌詞となっていますが、王道な正義のヒーローというよりかは、ダークヒーローな雰囲気。
砂の惑星や、ドーナツホールのMVからも感じますが、ハチさんの世界では「荒廃した地」や「独自の正義」などが大きなテーマになっていることが多いですね。
聴けば聴くほど、アンニュイな魅力に取り憑かれてしまう一曲だと感じます。
【5位】WORLD’S END UMBRELLA
https://youtu.be/GlBWvRslL2c?si=wqls5woZrqsXmxn5
『WORLD’S END UMBRELLA』は、ハチさんが活動開始から3曲目に投稿した楽曲であり、彼の歴史の中でも特に古いもの。
ただ、「古さ」や「粗さ」は感じず、むしろ米津玄師名義で発表している楽曲にも通ずるニュアンスを感じます。
曲調は、オルゴールを思わせる繊細で、輝きのある音を多く用いて作られているのが特徴です。
ハチさんの曲にはダークな雰囲気のものや、アンニュイな雰囲気のものが多いですが、この曲はそういった仄暗さを感じない、爽やかな曲調となっています。
歌詞は切ないような、幸せに満ちているような。聴く人によって解釈の分かれる、ハチさんらしい詩が並んでいます。
【6位】Mrs.Pumpkinの滑稽な夢
【オリジナル曲PV】Mrs.Pumpkinの滑稽な夢【初音ミク】
2009年10月、ハロウィンに先駆けて発表されたのが『Mrs.Pumpkinの滑稽な夢』です。思わず身体がリズムを刻んでしまうような、小気味のよいテンポが楽しい楽曲となっています。
影のあるムードなのに、暗くはない。そして繰り返し聴きたくなるような中毒性は、米津玄師名義で発表されている『死神』に近いものを感じます。死神にハマった米民たちは、Mrs.Pumpkinの滑稽な夢にもハマるんじゃないでしょうか。
https://youtu.be/8nxaZ69ElEc?si=DriUnpztYBcov2Rw
また、Mrs.Pumpkinの滑稽な夢は「歌ってみた」も盛んに投稿されていました。数々の作品の中でも、格段に人気だったのが赤飯さんによる作品です。
https://youtu.be/JiXpRXkqbvc?si=GJ3VtLmV2SLuLBmn
赤飯さんによるアレンジを混ぜて歌い上げられており、強烈なハロウィン感漂う雰囲気に心奪われる人が大量発生しました。原曲とあわせてこちらも聴いてみると、新しい楽しさや魅力を発見できると思います。
【7位】リンネ
https://youtu.be/EahYs-8tTjQ?si=gwuVNPJXJOATwMQU
『リンネ』は2010年7月にリリースされた楽曲で、個人的にはハチさんの曲の中でトップクラスに好きな曲です。
米津玄師名義の曲にはあまり見られない、人間の仄暗いところを詰め込んだような、ドロドロとした歌詞が特徴的。
曲調はハードなロック調で、全体的に「重~い」という印象を受けます。ただ、この重さがいいんですよね。
特に、私が「私が言うまでもないけど、ハチさんって天才なんだなあ」としみじみしてしまった歌詞がこちら。
蝉の鳴いて堕ちる頃電線が裂いた赤の下立ち入り禁止 蹴っ飛ばしてハチ『リンネ』
暗くて独特な言葉選びなのに、直感的に訴えかけてきて、その情景がありありと浮かんでくる。こんな切り取り方や、描き方をするセンスに、もう誰も追いつけないだろうと私は思います。
【8位】結ンデ開イテ羅刹ト骸
https://youtu.be/AKffZySqQts?si=E5tcDjleK9yX7DdL
リンネが気に入った方にイチオシなのが『結ンデ開イテ羅刹ト骸』。2010年1月に公開された本曲は、ちょっと背筋が冷えるような、おどろおどろしい雰囲気が特徴的です。
和テイストの旋律と、童謡のエッセンスを取り入れた曲調は、良い意味でレトロな雰囲気を感じられます。ただ、古臭い退屈さは一切なく、いつ聴いても新しい楽しさを感じられるのが不思議。
私は椎名林檎さんも半生以上愛しているのですが、結ンデ開イテ羅刹ト骸が孕む仄かな狂気と不気味さは、椎名林檎さんの『りんごのうた』や『歌舞伎町の女王』に近いものを感じます。
https://youtu.be/krCk3EcsaxE?si=CGbui6HC9wbDwxOI
いつか何かが間違って米津玄師さんと話せることがあったら「もしかして、椎名林檎さんの曲、好きですか?」と聞いてみたい。もはや自分で聞けなくていいから、誰か偉い人が聞いてきてほしい。(どこかのインタビューとかで発表されていたら教えてください…)
【9位】演劇テレプシコーラ
【オリジナル曲】演劇テレプシコーラ【初音ミク】
2010年4月リリースの『演劇テレプシコーラ』は、ハチさんの楽曲に共通する要素がふんだんに盛り込まれている一曲です。
マトリョシカやドーナツホールのような「虚構と現実」がキーワードになっていたり、リンネのように「逃れられない宿命」を描いていたり、WORLD’S END UMBRELLAのように儚く美しいメロディーになっていたり。
いろんな「ハチさんらしさ」が織り込まれていて、私はとっても好きな曲です。
ピアノとギターが織りなす繊細なサウンドと、ハチさんならではの世界観の歌詞が、聴くたびに心に染み付いて離れなくなります。高音感や電子音が少なく、全体的にまろやかなので、ボカロに聴き慣れていない方でも違和感なく聴けるはずです。
【10位】clock lock works
https://youtu.be/hEyvYm2YRXQ?si=DggsrmudLJowJtao
ここまでにご紹介したハチさんの曲は、ダークなものやアンニュイなものが多かったですが、それとは一変して明るく楽しいメロディーなのが『clock lock works』です。
2009年11月に発表された本曲は、「時間」と「歯車」が大きなテーマになっています。
時計の歯車や、社会の歯車として働く自分、いろんな「歯車」の動きと「時間」の巡りを、ハチさんならではの描写で映し出しています。
テンポの良い曲調からは想像もできないような深い歌詞なので、ぜひ歌詞にも注目しながら聴き入ってほしい一曲です。
【番外編】沙上の夢喰い少女
https://youtu.be/mq3t6aCbb8o?si=aJz6AKDzuyDqLk_Y
「あれ、なんか聴き覚えがある」と思った米民の方、正解です。2010年5月に発表された『沙上の夢喰い少女』は、2017年に『ゆめくいしょうじょ』としてリメイクされ、米津玄師名義で再び世に送り出されました。
正直、個人的にはゆめくいしょうじょのほうがゆったりしていて、心に染みる感じがするので好きです。
ただ、米民のみなさんには原曲も楽しんでほしく、番外編としてピックアップさせていただきました。
米津玄師であり、米津玄師ではない。ハチの名曲を聴いてほしい
出典:YouTube『ハチ - 砂の惑星 feat.初音ミク』
こうしてハチ時代の名曲を振り返ってみて感じたのが、「昔からとんでもねえペースで曲を出しているな」ということ。
この宝物みたいな、すばらしい曲たちを短いスパンでどんどん出せるのって、才能もあると思いますが、とにかく音楽が大好きなんだろうな…という感じがしてほっこりします。
先日のライブで、米津玄師さんは「当時、ニコニコ動画にボカロの曲を投稿すれば、多くの人に届くんじゃないかと思った。その予想の通り、いろんな人が聞いてくれて、画面の向こうに応援してくれている人がいることが心強かった。画面の向こうにいた人たちと、いま同じ空間にいることに感動する」といった意味合いのことを言っていました。
いまはハチ名義での楽曲リリースはほとんどありません。それでも、彼が心のなかで「ハチ時代」や「いまもハチであること」を大切にし続けてくれているのが、ファンとしては何よりもうれしいです。
だからこそ、ハチ時代の名曲も、いろんな方に聞いてほしいと思います。
彼の音楽を心から愛する者として、これからも、彼のすてきな曲が一人でも多くの人に届いてほしい。そんな願いを込めて、筆を置きます。
※本記事のアイキャッチ画像は米津玄師 公式Instagramより引用